東京医科大学に対する訴訟第2回口頭弁論が開かれました

7月26日、東京医科大学を被告とする損害賠償請求訴訟の第2回口頭弁論が開かれました。原告からは、元受験生の女性1名が、意見陳述を行いました。

今回初めて被告代理人が出席し、原告の提出した訴状に対する反論書面第1準備書面が提出されました。東京医大/被告第1準備書面

第3回口頭弁論期日は、10月25日午前10時です。

●原告の意見陳述の内容

1 私は、子どもの頃から手先が器用でした。その特技を人のために役立てられる仕事として、外科医を志望しました。また、外科医が不足している現状を知り、少しでも助けになりたいという気持ちもありました。

私は2017年、2018年と2度東京医科大学を受験しました。2回とも東京医大は私の第一志望校でした。家から通いやすいことはもちろんですが、正義・友愛・奉仕という学是にも魅せられていました。受験勉強に励みましたが、2018年は、一次試験は突破したものの、二次試験で不合格になりました。

2018年3月末頃、予備校で一緒だった男友達から連絡があり東京医大の繰り上げ合格が廻ってきたことを知らされました。私たちは、大きな医学部受験専門の予備校に通っていたので、互いのモチベーションを高く保つため模試がある度に数人で結果を見せあっていました。私は1度も彼より低い点を取りませんでした。その彼が合格したことを私は少し意外に思いましたが、”受験とはそういうものだ。本番なのに、今回は私の方が出来が悪かったのだ”と思いました。悔しい気持ちと自分の不甲斐なさに押し潰され、そこから立ち直ることは容易ではありませんでした。しかし、自己嫌悪のこの苦しさから逃れるためには来年必ず東京医大に正規で合格するんだと自分を奮い立たせ、再び受験勉強に身を入れました。私には医師になりたいのだという強い気持ちがあったからです。その気持ちに男女の区別はありません。

2 2018年の8月に、東京医大が二次試験で不正をしていたニュースを知りました。女子や多浪が不利に扱われることは漠然と分かっていましたが、現役男子と同点になった場合に負ける程度だと思っていました。もちろん、これでさえかなり遺憾に感じていました。ところが不正の実態はあまりに酷く、10点単位で差がつけられていることを知りました。

もしかしたら自分は、本当は春に東京医大に合格していたのかもしれない、だとすれば今私が必死に勉強している意味は何なのだろうか、時間の無駄だろうか、頑張っても自分が“女子”として受験するというそれだけの理由で報われないのだろうか、といったことが頭に渦巻きました。

3 11月末、自分が不正入試の被害者であることを知りました。実際に送られてきた合格通知を見ると、嬉しいどころか、人生で感じたことのない怒り、憎しみばかりが沸いてきました。受験を間近に控えたこの状況で、再び、8月のとき以上に精神的に追い詰められました。

東京医大による合格対象者の説明会では、反省の色が何一つない、理不尽な上から目線の説明を聞かされただけでした。参加者全体でおかしいと声を上げましたが、東京医大は何一つ態度を変えませんでした。さらに、それからしばらくして、実際に東京医大に入学した学生より高い点数を取っていた女子5人を再び不合格としたのです。東京医大の学是にある「正義」は、現実には微塵もありませんでした。

当時、私が通っていた予備校にも、私と同じく東京医大によって不当に不合格にされた女子生徒がいました。彼女は合格通知を受け取ると直ぐに予備校をやめて、入学を決めました。一足早く合格をもらった彼女を、他の多くの予備校生たちは羨んでいました。しかし、私があんなに入りたかった東京医大に入学をしなかたったのは、東京医大のあまりにも酷い対応をどうしても許すことができなかったからです。そして、このように努力をしても報われないような不当な行為は少しでも早く、少しでも多くこの世の中からなくさなければいけないと思ったからです。

激しい怒りや失望で、勉強どころの気分ではなかったのですが、東京医大のせいで夢が叶わなくなるのは嫌だ、今度の受験では何としてでも東京医大以上の医学部に入ろうと決意し、猛勉強して、なんとか今年2月、第一志望校に合格しました。

4 大学内では、差別を正当化する人も多くいました。

病院の元職員の方からは、「女性が増えると病院側も大変なんだよ?女性用の更衣室とか新しく作んなきゃいけないんだし。」と言われました。

「医学部は職業訓練学校なんだから、学校がどんな生徒を選ぼうと学校の自由」、「差別あるのわかってて受験したのに、何を今さら?」という声も耳にしました。

差別がどうこうとガタガタ騒ぐ前に、まずは勉強して合格することを考えた方がいい、と受験生に言っている医学生もいました。

5 性別が何であろうと、歳がいくつであろうと、受験では決して差を付けられるべきではないはずです。差を付けたいなら募集要項に「属性により差別します」と書けばよいのです。しかし、そうすれば世間からバッシングを受けるため、あたかも正当・平等に入試を行っているように見せかけて、裏で操作してきたのでしょう。東京医大は、時間、努力、金銭を注ぎ込んで受験に挑む私たちを侮辱していたとしか思えません。

未来の受験生に対し、「あなたは女の子だから、あなたは歳をとっているから、夢を諦めなさい」と言うような大人に自分は絶対なりたくないし、それを黙認する医療界であってほしくありません。こんなに悲しく辛い思いをするのは、私たちの代で最後にしたいです。その思いから、声を上げることを決意し、この訴訟に参加しました。